せっけんと合成洗剤


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「赤ちゃんを産湯に入れたとき、髪の毛は何で洗ってましたか」と質問すると目をシロクロされます。誰もが当たり前のように「ガーゼに石鹸をつけて体から頭まで洗っていた」と答えてくれます。「シャンプーで赤ちゃんの髪を洗っている」という人はいままで一人もいませんでした。ところが、気がつくと当たり前のように「シャンプー」に変っているのです。その謎を解くために石ケンと合成洗剤の話をしましょう。  今から3ー4千年も前の話になります。古代ギリシャで、羊をいけにえに焼き殺した後の土はよごれをよく落とす不思議な力がありました。これはいけにえからしたたり落ちた「脂」と「灰」がいっしょになって石ケンができていたのです。特に、サルプの丘の土が有名で、そのサルプがソープ(石ケン)の語源になったといわれています。  合成洗剤はドイツ軍が石ケンの原料油を食用にまわしたため、石ケンが足りなくなり作りだしたのが始りです。最初の合成洗剤は側鎖型アルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウム(略称ABS)というものです。しかし、この合成洗剤は毒性が強いのと、河川に流れ出ても微生物が分解できないために、川が泡だらけになるという問題が起きて使えなくなりました。その後、直鎖型アルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウム(略称LAS)や高級アルコール系の合成洗剤が主流となっています。最近は原料に植物油脂を使った合成洗剤がでまわって消費者を混乱させています。 植物油脂でも合成洗剤は合成洗剤です。

毒性


 我々の細胞は細胞膜で包まれています。この細胞膜は選択透過性といって、体に必要な物質は膜を通すが、危険な物質は通さないという性質を持っています。合成洗剤はこの細胞膜の選択透過性を狂わすのです。その結果、毒物の吸収を促進することが起きます。  また、合成洗剤はタンパク質に作用する力が強いことが問題です。それに比べて石鹸はタンパク質とほとんど反応しません。タンパク質というのは私たちの生命現象を司どっている物質です。  こんなことを言わなくても、主婦の手の皮膚がガサガサになったり、湿疹ができたり、今でも皮膚科での危害発生の上位を占めています。  ほかにも、妊娠したマウスの皮膚に塗ると骨の奇形や胎仔の体重が少なくなることが確かめられています。また、動物実験(ラット)でも長い間与え続けると最後には癌の発生が27%も多くなることがわかっています。

東南アジアに広がる合成洗剤


 私たちは東南アジア5ヵ国の合成洗剤と手荒れの調査を行なっています。電気洗濯機を買う余裕がないので、合成洗剤を石鹸のように使うのです。物資が豊かになりつつあるタイやインドネシア、フィリピンはベトナムや中国より合成洗剤の使用が多く、手荒れも2倍近くになっていました。日本での合成洗剤追放運動を尻目に東南アジアで合成洗剤が売られているのです。そして、河川の汚染が深刻な環境問題になりかかっています。

説明:石鹸も合成洗剤も界面活性剤と呼ばれます。構造的には油脂と馴染みやすい部分(親油基)と水に馴染みやすい部分(親水基)を持っています。一般に使われている石鹸は動植物の油脂を原料に苛性ソーダー(苛性カリを使うと液状になる)を使って作ります。苛性ソーダー(またはカリウム)を使ってないものは原料がヤシ油であろうとなんであろうと合成洗剤と考えてさしつかえありません。

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