健康診断(上)

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健康診断について乳がん肺がんは役にたたないという報告が出たようです。
日本の医療は自由診療体制ですから、八百屋さんや魚屋さんと大きな違いはありません。病院もピンからキリですし、赤字解消に必死です。そこで健康診断という商品にスポットをあててみました。
 有名人がガンを公表したら保健所のガン検診を受ける人が急に増えたそうです。「早期発見・早期治療」という信仰にも似た思い込みが私たちにはあります。確かに、胃ガンは早期発見すれば85%が5年以上生存すると報告されています。乳ガン(95%)、子宮がん(88%)、膀胱ガン(87%)、結腸ガン(85%)も早期発見すれば生存率が高いのです。ところがこうした早期発見がほとんど役にたたないガンもあります。私の友人は胆管ガンがあるということはわかったのですが治療できず、手を施せないまま亡くなってしまいました。肝ガン(9%)や膵臓ガン(15%)も早期発見しても悲しい結果になることが多いのです。早く発見して手術して、本人も家族も辛い思いをして助からない、それなら調子が悪くなるまで知らずに家族と平和な時を過すほうが幸せかも知れません。
 「エイズ検査を受けましょう」とテレビから流れています。でも、多くの人が受けていません。治らない病気は発見しても不幸になるだけだということを肌で知っているからです。アメリカでは遺伝病の診断ができるようになったため、保険会社が特別な遺伝子を持つ人の保険加入を断わるというので大問題になっています。日本だってアメリカのことだと言ってられません。私たちの身近な例でも、尿検査で蛋白や糖を自覚症状がないうちに発見して医学的管理や治療をしても、本人に症状がでてきてから治療しても結果的に大きな違いがないと報告されています。苦痛な管理を長く受けるだけ不利なのです。でも、こうした流れを受入れる余地が日本人にはないようです。この原因の一つに「手後れですね。もう少し早ければ良かったのに」という医者の弁解がありあす。悪いのは早く来なかった患者だよというのです。こうして一般市民は「手後れ恐怖症」になっています。セッセとお金を出して人間ドックや検診してしまうのです。
 一口に予防といっても、早期発見・早期治療は2次予防と呼ばれる範囲に入ります。2次というなら1次、3次もあるのかということになります。もちろん1次予防も3次予防もあります。3次予防は病気になってしまったが、これ以上病気を悪化させないようにする予防措置をいいます。1次予防は食べ物に気をつけたり、ジョギングなどの運動をしたり、休養をとったり、今日から禁煙と誓ってタバコをやめるのも1次予防になります。健康のためにと生協や共同購入していることも広い意味での1次予防なのです。いわゆる一般的な日常の健康管理なのです。ナンーダといわないでください。このあたりまえのことが思っているよりズーッと効果があるということがわかってきました。
 アメリカでの成人病予防は医療でなく生活のスタイルを変えるだけで半分以上防げることが報告されています。こうした予防を1次予防といいます。これが予防の柱なのです。世界的には予防といえば一次予防なのです。
 ところが日本で予防といえばほとんど人間ドックや検査です。日本の医者は1次予防はお金になりませんから力を入れませんでした。2次予防はお金になります。国民も予防といえば「健診」と思い込むようになったのです。検査して要精密検診となればまたお金になります。こうして患者を発掘しながら医療需要が拡大されていきました。早期発見、早期治療がキャッチフレーズになったのです。本来、医療というのは個人的なものです。しかし、これを集団でやると得をする人がいます。次回はない病気の予防健診の話しです。

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