米国での牛

生物兵器としての天然痘

 

lin_067.gif (542 バイト)

米国での牛
■ 獣医病理学的目的のためにアメリカ国内の屠場で殺された牛の各種部位を調べた報告が出されました。屠殺は空気圧銃を使って行われており、圧縮空気が頭蓋内に射ち込まれます。この方法では、討ち込む際の外傷と同時に、打ち込まれた圧気によって脳組織が細かく破砕されます(これにより即死させる)。この手法はイギリスでは1980年から、アメリカでは1982年から採用されてきました。こうして屠殺された牛の各部位を顕微鏡で観察したところ、肺組織では大きな脳組織が肺動脈の枝脈をふさいでおり、また肝臓、腎臓および右心室の血管中にも細かい神経組織(最大直径約3cm)が見られました。現在までのところ、アメリカ国内では狂牛病も新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病も見つかっていませんが、このように現在行われている屠殺方法で殺された牛の内臓に、狂牛病の感染に密接に関与するとされている神経組織が混入していることは、留意すべきことです。(Transfusion, Vol. 41, No. 11, Nov. 2001)

生物兵器としての天然痘
■ アメリカでは炭疽菌による生物兵器テロ騒ぎが続いていますが、アメリカ政府は他の生物兵器が用いられる危険性についても視野に入れて対策検討を続けており、緊張が絶えないようです。炭疽菌に続いて最も危険視されているのが天然痘です。天然痘は1977年に最後の症例が確認されて以来見つかっておらず、全世界で撲滅されたとWHOが1979年に宣言しています(WHOは1979年までの11年間に渡り集中的な天然痘予防接種キャンペーンを実施してきた)。しかしその後も世界で2ヶ所、アメリカ(CDC)とロシアでそのウイルス・サンプルが厳重な管理のもとに公式に保存されています。天然痘は人間のみを宿主とするvariolaというウイルスに感染することよって起こり、感染すると約10日後から頭痛、背痛、嘔吐、高熱などか起こります。その後、熱が治まるかと思われた頃から顔や手足に赤斑が出始めます。やがて赤斑は膿疱になり、鼻や口、喉なども含む全身に広がり飲食をも困難にし、痂(かさぶた)だらけになった皮膚が崩れはじめます。死亡率は10%〜40%で、10日から16日以内に内臓不全や肺炎、免疫過剰などで死に至ります。ワクチンは1796年に開発されていますが、20世紀だけでも3億人が天然痘のために死亡しています。生物兵器としては1754年〜1767年のフレンチ=インデ ィアン戦争(7年戦争:1754-1763)でイギリス軍側により既に使われており、この時は天然痘患者の使った毛布をインディアン側の陣地に送り込み、インディアン部族の間に50%以上の致死率で感染症を流行させた、という歴史もあります。天然痘の予防接種は、アメリカでは(全世界撲滅宣言後の)1972年に廃止されていますが、今回の騒ぎで新たな生物テロの可能性を重要視するアメリカ政府は、現在予防接種の再開も検討しています。しかし天然痘の予防接種は重篤な副作用を引き起こすことも明らかになっています。15万人に1人の確率で重篤な感染症や脳炎、そして100万人に1人の確率で死亡するケースがあります。一方、米国医学会(American Medical Association: AMA)は12月4日、こうした死亡も含むワクチンそのものの副作用の危険性も考慮し、天然痘予防接種の再開・義務化に反対する意向を明らかにしました。また、1歳以下の乳児および免疫系統が弱くなっている高齢者は、天然痘予防接種に耐えられないことも指摘されています。米国疾病管理予防センター(CDC)も、実際に天然痘感染発生が確認されない限り予防接種は実施すべきでない、とする報告をまとめています。(CDC, American Medical Association, AP, ABC News, Times Newspapers, )(広瀬訳)

lin_063.gif (482 バイト)

b39_001.gif (494 バイト)