照射直後のジャガイモの出荷停止と照射ジャガイモの生産中止に関する申し入れ

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2019/6/3
厚生労働大臣
根本 匠 様
    

照射食品反対連絡会
世話人和田 正江(主婦連合会)
纐纈 美千世(日本消費者連盟)
里見 宏 (食品照射ネットワーク)
久保田 裕子(日本有機農業研究会)


照射直後のジャガイモの出荷停止と照射ジャガイモの生産中止に関する申し入れ


  毎年、当会が行っております照射ジャガイモの市場調査で放射線照射直後のジャガイモが群馬県、新潟県、千葉県、東京都、福島県、宮城県、石川県、埼玉県の8都県で確認されました。照射日は2019年2月12日から4月13日の間に照射されていました。
 北海道士幌町農協(表示ラベルQRコード)によれば、3月から4月に出荷するジャガイモの一部に放射線を照射しているそうです。
 当初、秋に収穫したジャガイモに照射し、それを春の端境期に出荷すると説明されていましたが、約50年の経過の中で端境期でも照射するように変化しています。
 当会は照射直後のジャガイモは危険であるというデータを集めております。食品照射研究運営会議が提出した「放射線照射による馬鈴薯の発芽防止に関する研究成果報告書」でも、放射線照射直後のジャガイモが安全であるというデータはありません。
 1972年に照射ジャガイモの安全性を審議した食品衛生調査会の他の審議資料にも照射直後の安全性を確認できるデータは入っていません。逆に、照射直後の食品は危険を示す結果が報告されています。
 もともとジャガイモへの放射線照射は端境期の解消でした。ところが、長崎などの産地から新ジャガイモが出荷されるようになり端境期の問題はほぼ解消しています。
 繰り返しますが、照射してまで端境期を解消しなければならないという状況は全くなくなっています。
 照射ジャガイモは原子力の平和利用を市民に肌で実感させるという原子力政策で行われてきました。しかし、照射ベビーフード事件や3.11の福島原発事故で多くの人が照射食品に疑問を持ち警戒もしています。しかし、照射ジャガイモは市場のジャガイモの半値近くで安売りされており、情報量の足りない人に照射ジャガイモが購入される事実があります。
 厚生労働省は食品衛生法で禁止されている放射線照射を例外としてジャガイモに認めていますが再禁止する時期が来ていると考えます。
 また、原子力委員会の指導力で照射施設を抱えた士幌町農協は少量でも照射しているという既成事実を作らざるを得ない状況に追い込まれています。これは士幌の農民にとっても不幸なことです。
 役割の終わった照射ジャガイモについて下記の3項目について申し入れいたしますので早急にご検討下さい。

―――記―――

1.照射直後のジャガイモは出荷を禁止してください。
2.休眠期が終わったジャガイモに照射することを禁止してください。
3.照射ジャガイモの社会的必要性がなくなったことを踏まえ、照射認可を取り消してください。


追加資料
照射直後の危険を示す実験

 1959年、ソ連生物研究科学センター生物物理学研究所のA.M.クージンらは照射直後のジャガイモのアルコール抽出物が遺伝子や胎児に異常を起こすと報告しています。時間経過とともに抽出物の毒性は少なくなるとも報告しています。
 このソ連の実験に関連して、インドの国立栄養研究所のシヴァミナタンチョプラらはジャガイモの抽出物に放射線を照射し、その抽出物を大麦胚細胞に入れ培養すると染色体の切断が起きることを報告しています。
 また、アメリカ陸軍の照射食品の実験も照射後3ヶ月以上貯蔵し実験が行われるように変化しています。(ミシガン大学のブラウネルらやコーネル大学のマッケイらの慢性毒性実験)。
 1975年、インド国立栄養研究所のC.バハサカラムらは2歳から5歳の栄養失調で入院している15人を3群に分け、「照射直後の小麦」、「照射後12週経過した小麦」、「非照射小麦」、を体重1キロ当たり20グラム与え、0週から6週まで採血し白血球の染色体を調べています。照射直後で線量が多いほど染色体に異常が多く出ることを報告しています。これは照射直後の照射食品が危険であることを示唆しています。その後、追試がされた結果異常はないと言われましたが、条件が違っていて追試になっていなかったことが判明しております。
(The American Journal of Clinical Nutrition 28 : 130-135,1975,)
 また、初期の照射食品の動物実験は照射後ただちに投与されたためと考えられる異常が多く報告されています。
 1963年、F.R.Fisherは動物実験で得られた異常をまとめて報告しています。小麦(イヌ)甲状腺炎(Reberら),オレンジ(ラット)成長抑制(Phillipsら)、ベーコンおよび砂糖漬け果実(ラット)寿命短縮(Meadら)、ラード(イヌ)消化吸収の遅れ(Nassetら)、砂糖処理果実および緑豆(イヌ)脾臓重量の増加(Larsonら)、ニンジン(ラット)成長率減少(Tinsleyら)、牛肉(イヌ)繁殖率減退(McCayら)、調整飼料(マウス)心臓障害(Monsenら)などの異常があったと報告しています。
(Radiation Research-Proc,Intern.Conf.,Natick(edited by F.R.Fisher)1963.)
 これらの異常はビタミンCの減少などの仮説が出されましたが確認はされていません。初期の実験は照射直後の飼料が与えられたからだとも考えられています。放射線による食品の励起状態については急激な変化がありますが、その変化は追跡できないとされています。

  なぜ照射直後の食品は危険か
 放射線のエネルギーで照射された食品分子は励起状態となり、その後急速に崩壊していきますが、崩壊によりエネルギー電子、フリーラジカル、イオンなどができ、それを経て過酸化物、酸化物、シクロブタノン類や未知物質の生成など、反応性の高い粒子や化学物質が生成されます。
 放射線により作り出された活性化分子の影響を受けた食品の問題に気がついた研究者たちは日本で照射ジャガイモが許可になったあと「9月頃から12月半ばまでに照射を終わり、端境期の2−4月頃出荷するので3ヶ月以上の時間が立っているので問題はない」と発言していました。
 しかし、50年近く経った現在、照射直後のジャガイモが安全性を考慮されることなく出荷されています。照射直後のジャガイモが店頭に並び、消費者の安全をおびやかしています。こうした照射の仕方が大きく変更されたことが士幌町農協より厚生労働省に連絡もなく勝手に行われていたら大問題になります。

  休眠期を終わったジャガイモへの照射は問題
 照射ジャガイモは休眠期の照射と休眠期が終わってからの照射では挙動が違うと「研究成果報告書」でも報告されています。休眠期が終わってから照射されたジャガイモは芽がかなり伸びてから枯渇するからです。商品として「芽どめじゃが」と表示するには不当表示になるほど芽が伸びます。しかし、今年は3月、4月でも全く発芽せず、照射じゃがいもにある小さな発芽の痕跡も見せません。消費者は過剰な放射線が照射されたのではないか危惧しております。ただちに士幌町農協のアイソトープ照射センターでの照射記録をチェックしてください。

  権限を移譲された北海道庁の不公平な情報開示の問題について
 新たな問題として、厚生労働省から照射ジャガイモに関して権限移管された北海道庁は照射ジャガイモの生産量を情報公開法によって請求されても「企業の競争力が損なわれる」と一方的な論理で農業法人の利害を盾に情報公開を拒否しています。食品衛生法で禁止されている放射線照射を例外的に認められ、照射施設に3億円近い税金が支出されている照射ジャガイモです。放射線科学の進歩で照射食品への新しい毒性問題が浮上していることから市民団体が生産量を知ることを急務としています。こうした事実をただちに確認し、厚生労働省には速やかに情報公開をするよう指導してください。

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