アメリカ「有機食品」基準・続報
遺伝子組換え・放射線照射・都市下水汚泥利用をはずす

lin_067.gif (542 バイト)

 

■反対意見、20万件

 有機食品法の施行規則を策定しているアメリカでは、昨年暮れ、農務省が最終規則案に付随して、有機食品であっても「遺伝子組換え」「放射線照射」「下水汚泥の利用」の3点を認めたいという提示をしていたが、4月末日までの意見受付に20万件の意見が寄せられた。きわめて反対の強いことが明らかになり、農務省は、これら3点を有機食品においては認めない内容の規則を年内に策定することになった。
 もともと、このような提案自体がこれまでの「有機」概念の常識を逸脱したもので、ある意味では落ちつくべきところに落ちついたとも言える。しかしながら、落ちつかせるために、アメリカの有機農業関係者も市民グループも、そして私たち日本の市民消費者も、ずいぶんと手間ひまをかけさせられたものだ。

■アグリビジネスの「有機」?

 今日の「有機」は、特に最近の商業主義の流通業者等によって、いわば「安全」「環境保全」などを売り物にした高級商品のような扱いになってしまっている。しかも、アメリカなどからの輸入の有機農産物や有機原材料を使った加工食品も出回るようになった。
 「全国統一の有機基準策定は、『有機』をさらなる商業化とグローバル化にみちびく。大アグリビジネスのいう『有機』などというものを買うのかい? 有機農業とは、本来、食べ物を農業者と消費者が地域に取り戻す『運動』なんだ。基準を超え、地域における食べ物運動こそを進めよう」と、呼びかけているのは、ほかでもない食品照射反対運動の急先鋒「フード&ウォーター」のマイケル・コルビーである(同ジャーナル、1998年春号)。

■基準を超えて、食べ物運動を!

 日本では、1970年代に有機農業運動が始まった当初から、食べ物を儲けのための「商品」とすることを峻拒し、農業生産者と消費者が相互扶助的で友好的な協力関係を築いて直接的に取引し自主的に配送を行う「生産者と消費者の提携」(産消提携)が提唱されて実践されてきた。アメリカでも、フード・コープの流れと最近の動きであるCSA(コミュニティ・サポーテッド・アグリカルチュア/農業者と消費者の提携組織)が注目され、特にこの4、5年のあいだに急成長している。
 基準問題で出遅れている日本は今、基準認証のしくみづくりに忙しい。しかし日本でも、真に必要なのは、安全な食べ物を地域で(少なくとも国内で)つくり、生産者・消費者が協力して自分たちの手に取り戻す運動であるだろう。 (久保田)

lin_064.gif (482 バイト)

b39_001.gif (494 バイト)