環境ホルモン

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「精子の数が半分になっているて本当ですか?」

 よく聞かれるので調べてみました。この話の元になっているのは1992年の英国医学雑誌にでたカールソンらの論文のようです。この論文は世界中で発表された精液に関する論文を探してまとめたものです。1938年から1991年までに61件の論文があり、14,947人の情報があったそうです。
 その内容を整理すると、昔は1回の平均精液量が3.40ミリリットルだったのに現在は2.75ミリリットルになっているというのです。また、精液に含まれる精子の数は1ミリリットルあたり1億1千3百万個あったのに、今は6千6百万個(42%減少)になっていたというのです。
 心配される人がいるといけないので医学辞典に書いてある情報も入れておきましょう。人間の精液の量には幅があって1回に2から6ミリリットルが出るそうです。ただし、出す回数が多くなれば量も減ります。精子の数が1ミリリットルあたり4千万個以下になると乏精子症と呼ばれています。また、精子が2千万個以下になると妊娠率がかなり悪くなるといわれています。
(注:この数値は、アメリカの国立医学図書館が1879年から発行している「Index Medicus(医学索引)」によって約1千万件の論文から検索されています)
 1994年にアウガーらによって、パリに住んでいる男性の20年間を通じた精液の減少について報告されたものがあります。もう一件、イギリスのスッコットランドで11年間同じ人達の精液の質の変化を調べた報告が1996年に発表されています。
 こうした論文から精液や精子が減っているといわれているようです。ただ、条件がいろいろ違っているので一概にこうだと言えない歯痒さが残っています。

 さて、本題に入りましょう。「環境ホルモン」という言葉が流行っているといってよいでしょう。これは「内分泌撹乱化学物質」とも呼ばれています。身体の中に入ると女性ホルモン(エストロゲン)と同じ様な働きをする化学物質をさしています。プラスチック容器や農薬として広く使われ環境中にたくさん残っているので人や生物への影響が問題になっています。ゴミ焼却炉で塩ビを燃すとできるダイオキシンも環境ホルモン作用を持つことがわかっています。こうした化学物質が環境の生き物に影響を与えている例が示され、人間でも体内に蓄積されていることからその危険性が問題にされているのです。

 どんな例があるのですか見ましょう。これまでにもホルモンによる問題はいくつかありました。例えば、1981年、イタリアで少年の胸が大きくなり原因は牛肉に残った女性ホルモンらしいというので使用をやめた事件が報道されました。牛に女性ホルモンを使うと、オス牛の肉が柔らかくなり、メスは牛乳を良く出すようになるのからです。この方法は1954年、米国で行なわれだしました。この牛に使ったホルモンは人に薬として使っていたものと同じものが使われました。まあ、人畜共通に使っていたホルモン剤なのです。
 この問題は先ず人間から見つかりました。このホルモン剤はジエチルスチルベストロール(DES)という長い名前の合成女性ホルモンです。この合成ホルモンは妊婦の流産防止に使われていました。ころが、このホルモン剤が大きな被害を生み出していたのです。
 1971年、A.L.ハーベスト博士は米国東部に住む女の子たちのなかに思春期になると腟がんになる子が多いことに気がついたのです。膣がんなんてめったに若い人がかかる病気ではありません。すぐ原因が調べられました。その結果、膣がんの子どもに共通なのは、この子たちの母親が若いときにこの合成ホルモン剤(DES)を飲んでいたことだったのです。母親が飲んだホルモン剤が子どものガンの原因だったのです。その後の調査で子宮がんや膀胱がんも多くなること、それに女の子だけでなく10歳から19歳の男の子にも前立腺癌や睾丸にもガンができることがわかったのです。このとき、牛にも使われていたので調べられ、肉を食べた人にも悪影響をおよぼす量が残っているというのでこの合成ホルモンは使えなくなりました。しかし、現在牛には違うホルモン剤が使われています。これが合成ホルモンによる人への害の最初の例となりました。

 1990年代になると環境学者から問題がつぎつぎと指摘されだしました。アメリカのフロリダのアポプカ湖に住む雄ワニの生殖器が異常を起こし子どもがつくれなくなっていたのです。この原因が近くの農薬工場から流れ込んだディコフォールなどの化学物質による汚染だとされたのです。
 日本やイギリス、アメリカでも巻貝の雌が雄の生殖器を持つものが報告され、その原因が船の底につく貝類を駆除するために使ったトリブチルスズ(TBT)だと指摘されています。
 アメリカのシンボルである白頭ワシの卵が孵らないとか、セグロカモメのホルモン器官の異常が指摘されています。イギリスでは雌と雄の両方の生殖器を持つ魚が見つかり、住んでいる河の水から経口避妊薬などのホルモン成分が検出されてホルモン汚染が疑われだしました。

 DDTという農薬はその毒性と残留性の高さから生産が禁止されましたが、じつはこのDDTに女性ホルモンと同じ様な作用があることは今から40年前ほどにわかっていたのです。カネミ油症事件のPCBにも女性ホルモン様作用があることは動物実験で確かめられています。しかし、このホルモン様作用が人間とって、地球上に住む動物にとって大きな問題になる可能性があると気がつくまでに長い時間がかかったのです。なぜなら、次の世代に影響を与える可能性が高いからなのです。先に挙げたDESは親が飲むと子どもが思春期にガンになるという時限爆弾だったということを証明していたからです。
 多くの研究から化学物質の中にホルモン様作用を持つものがたくさんあることがわかってきています。

 さて、今問題になっているものを例に挙げましょう。厚生省は3月13日に食品衛生調査会を開きました。議題は次の3つのプラスチックのホルモン様作用についてでした。1つは学校給食の食器としてつかわれているポリカーボネートから溶出してくるビスフェノール−Aというものです。それからカップ麺の容器などに使われている発砲スチロールの原料のポリスチレン、ラップやシートに使われるポリ塩化ビニルです。
 委員会の結論は、現時点ではデータが十分にない。まだホルモン系を撹乱するメカニズムがはっきりしていない。調査会だけの問題でないし、海外でも対応が模索中なのであるかその様子を見ようというものでした(ちおニューズレター22号に詳しい資料あり)
 問題は危険だとわかってから禁止するなら調査会はいらないのです。こうした政治的な判断を研究者に委ねていることがいかに異常かということです。彼らの判断は結果ですから、これは危険だというときは被害者がでているということです。問題が提起されたとき政治家や行政府はどうするかが問われているのです。

1.ポリカーボネート

 このプラスチックの生産量は25万トンで食器などの食品関係に4千トン使われていると報告されています。このポリカーボネート食器を使っている学校給食は5,240校(16.8%)になっています。このポリカーボネートからビスフェノール−Aが溶け出してきます。ですから溶出基準が2.5ppmとされています。ビスフェノール−Aのホルモン作用は本物のホルモンの2千分の1程度のものとされています。しかし、妊娠マウスにビスフェノール−Aをマウス1キロ当りに換算して(1匹30グラムとすれば30匹前後になる)2マイクログラムと20マイクログラムを与えたら生まれたオスマウスの前立線が30−35%も大きくなっていたという報告があるのです。これに対し、溶出量は少ないので問題ないとしたのですが、なぜ消費者が危険負担しなければならないのかまったく問題です。

2.ポリスチレン

 スーパーで買うとトレーに入っていますね。あれが発砲スチロールだということはご存知ですよね。生産量は多くて150万トンもあります。うち食品関係で4万トンとされます。このホルモン作用は子どもたちにガンを作ったDESの2千分の1とされています。また、スチレンを扱う女性労働者やグラスファイバー強化ボートを作る工場の女性はそうでない女性に比べてホルモン濃度が高くなっていたと報告されています。私たちが使っているカップラーメンの容器からは1−33ppbが溶出しています。

3.ポリ塩化ビニル

 塩ビの生産量も多く250万トンで食品関係で11万トン使われています。この中のに添加される可塑剤(プラスチックを柔らかくするために入れる添加剤)のフタル酸ジエチルヘキシルが問題のホルモン作用を持つ成分です。動物実験ではマウスで奇形があったり、ラットでは性周期が延長したり排卵阻害が報告されています。同じくラットで精細管萎縮、前立腺の重量減少が報告されています。また、発癌性があるという報告があります。このフタル酸ジエチルヘキシルが飲料で100グラム当り6.5マイクログラム、食品で29マキクログラム検出されています。

 大量に使われ環境を汚染した化学物質がじわじわと次の世代に影響を与えているかもしれないという危険をはらんでいるので問題です。食器くらいプラスッチクは止めたらいかがですか。

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