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勘(かん)のいい人っていますよね。ものごとの本質を直感的に読みとることですから当ることもあれば外れることもあります。だいたい、勘のいい人というのはいろいろな情報を持っていたり、いろいろな経験をしている人が多いんです。でも、この複雑な世の中を勘だけで生きて行くのはたいへんです。とくに、私たちの身の回りにあるものの安全性を勘で決めるというのは無理があります。そこで安全を確かめる実験がされたり(実験というのは全ての条件が決められているか、または制御されている場合で、化学実験などが代表的なものです)、試験(試験というのは一部の因子は固定または制御できるが、他の因子は自然に放置するか、ゆるくしか管理できないもので、薬の臨床試験などが代表的なものです)、調査(調査というのは全ての因子が自由に動くなかで、ある現象に関する因子の解析を行なうもので、タバコと肺がんの疫学調査などが代表的なものです)が行われます。真実は一つですからどの方法で誰がやっても同じ結果が得られるはずです。ですから、結果は多くの人に説得力をもちます。でも、追試をしてみると同じ結果にならないこともあります。同じ方法、同じ条件といってもまったく同じというのは無理があるからです。しかし、それでも同じ法則性があるなら幅はあるにしても同じような結果、同じような傾向がでてきます。素人でも、だいたいここら辺までは感覚的に理解していただけるのではないでしょうか。ところで、調査の結論がまったく正反対になることがときにあります。科学というのは再現性があるから多くの人に支持されているのです。それなのに、まったく正反対の結論がでている場合どう考えたらよいのでしょう。今回は電波(電磁波)の人間への作用についての疫学調査を紹介しながらこの問題を考えてみます。
こんなタイトルを見るのもいやだという人もいるかましれません。ちょっと我慢をしてください。電磁波という言葉を聞いたことありませんか。私たちが電波といっているものがまさに電磁波なのです。電場と磁場があってこれが一緒になって電波は伝わっていきます。実は太陽の光も電磁波なのです。
放送局は電波(電磁波)を出しています。テレビはVHF(超短波)とかUHF(極超短波)という電波(電磁波)で放送しています。電波は波長あるいは周波数によって分類されます。1秒間に何回の波があるかで周波数が決められます。NHKは○○○ヘルツというのを聞いたことがあると思います。この電波(電磁波)は私たちの生活と密接に関係しています。
飛行機に乗ると「離着陸の際の携帯電話やパソコンなどの電子機器は運行計器に支障をきたしますのでご使用はご遠慮下さい」というアナウスが入ります。病院では「電子機器は、患者についている機器類や心臓ペースメーカーに異常を起こすことがありますので使用しないでください」といわれます。これは電子機器から電波(電磁波)が発信されているからです。
電波(電磁波)はエネルギーを持っています。強いエネルギーを持つものから弱いエネルギーのものまでいろいろです。波の振幅によって違います。
初期のレーダや放送などにたずさわった人たちが電波(電磁波)を浴びると温かくなることに気がつきました。計ってみると体温が上昇していたそうです。これが電波(電磁波)のもつ熱効果作用というものです。電子レンジはマグネトロンという電波(電磁波)の発振器があり、そこから波長約12センチメートルのマイクロ波と呼ばれる電波(電磁波)がでています。これによって水の分子が激しく動かされて熱がでます。この熱で調理をするわけです。
「電波は危なくないか」(徳丸仁著・講談社ブルーバックス)の中に2つの例が紹介されています。1957年、42歳のアメリカ人が軍のレーダから3メートルの場所で腹部にレーダ電波の直撃を受けて死亡しました。数秒で腹部に熱を感じ、1分以内にそれに耐えられなくなりその場を離れたそうです。そして30分以内に急性の腹痛と嘔吐が起き、血圧が低下し(90ー30)、白血球数は1万300になったそうです。その後、急性腹膜炎の症状が現われただちに手術をしたのですが4日後に死亡したそうです。解剖の結果、空腸に潰瘍と穿孔、副腎の萎縮が認められたと報告されています。
また、池の水が25度位ではコイは死なないのですが3千万ヘルツの電波を水槽のコイに照射すると水温が25度になるとコイは死ぬそうです。電波を照射しないで、熱を加え水を温めたときは35度以上にならないとコイは死なないので電波(電磁波)がなにかしていると考える必要があります。
さて、医療の世界ではジアテルミ療法(高周波療法)というのがあります。腰痛や椎間板症などの痛みに1万ヘルツから100万ヘルツの電波(電磁波)をかけておこなう温熱療法です。現在では超短波療法(1千万ヘルツから1億ヘルツ)やマイクロウエーブ療法(24億5千万ヘルツ)が行なわれています。マイクロウエーブ療法はアンテナから出た電波(電磁波)で皮膚から5−6センチの深さまで到達して皮膚や脂肪や筋肉で熱を発生させます。生殖器や金属が挿入された部分、出血部やうっ血部への照射は禁忌とされています。
他にも、VDT(ビデオ・ディスプレイ・ターミナル)症侯群というのを聞いたことありませんか。パソコンなどから出ている50ヘルツ以下の超低周波磁気が人間に影響あるのではないかという問題です。具体的には角膜炎や眼圧の上昇などの視機能障害からしびれやストレスや生理不順などです。
これらのことから、強い電波(電磁波)は人間にいろいろ作用するということはお解りいただけたと思います。では、弱い電波(電磁波)を長く曝露した場合どうなるか。また、強弱ではなく、電波(電磁波)のある波長に対して人間は反応するのではないか、という仮説もあります。
1979年3月、ワルトハイマーとリイーパーという二人の研究者は「電力配線の形態と小児ガン」という論文をアメリカの疫学雑誌に発表しました。1976年から77年にコロラド州の高圧電流の流れている電力線の近くに住む子どもと、離れた地区に住む子どもを比較したところ、電力線の近くに住んでいる子どもにはガンが多く電波(電磁波)の被曝量と関係があったというものでした。小児のガンは2倍、白血病は3倍にもなっていると内容でした。その後、この論文には各患者の家で電波(電磁波)を測定していないなど反論が寄せられ大きな論争になっていきました。
この疫学調査がきっかけとなりいろいろな疫学調査が行なわれだしました。なかでもスウェーデンのカロリンスカ研究所が行なった疫学調査は有名です。
1960年から85年までの国民の病気登録をもとに、スウェーデンの送電線がある所から325メートル以内に自分の住む土地があり、そこに1年以上住んだことのある子どもを対象に調査が行なわれたのです。そこで電波(電磁波)の調査も行ない、過去のデータは推定値で被曝量が求められました。その結果は3ミリガウス以上の被曝で小児白血病が3.8倍、2ミリガウス以上で2.7倍になるというものでした。また、送電線ばかりでなくヘヤードライヤーや電気毛布を使っていると危険ではないかともいわれたのです。こうなると子どもを持つ保護者としてはたまらないものがあります。住んでいる場所や家はすぐ替えられるものではないからです。でも、電磁波の被曝量と小児白血病などのガンになる人の数は比例しているようです。ところが、今度はまったく正反対の調査結果がでたと報道されました。
今年の7月3日号の「ニューイン グランド ジャーナル オブ メディスン」という有名な雑誌に、アメリカの国立ガン研究所から「居住地での磁場の曝露と小児の急性リンパ芽球性白血病」という調査結果が発表されました。この研究は電線からでている電磁波で子どもの脳腫瘍や白血病が増えるという今までの調査研究とまったく反対で、白血病は増えていないという結論になっています。
これまでの研究では子どもが磁場にさらされると白血病になりやすくなるという報告が多かったのですが、今回の調査結果では60Hz(ヘルツ)の電力線が通っている米国で、白血病になった子ども(患者群)と白血病でない子ども(対照群)の家の電波(電磁波)を測って、電磁波の強い所に住む子どもに白血病が本当に多かったかどうか調べたものです。この調査方法は患者対照研究といわれるものです。今回発表になった調査は今までに発表された調査より調べた人数が多いのと、それぞれの家の電磁波を部屋の中と玄関で測るという正確な調査になっています。
簡単に方法を説明しましょう。まず、1989年から94年の間に15歳未満で急性リンパ芽球性白血病(ALL)と診断された1914人の子どもと、対照群として以前ガンの電話による全米調査に協力した1987人の子どもが選ばれました。その中から電話番号の最初の八桁が同じで、年齢も人種も住んでいた州も同じになるような子どもが選ばれました。最終的に白血病の子ども629人と対照者619人が選ばれました。調査される子どもの健康状態をまったく知らないデータ収集者が、子どもが現在住んでいる家や引っ越したことのある人は以前住んでいた家の子ども部屋で24時間、そしてその他の3,4室および玄関ドアーの外で30秒間の磁場を測定したのです。余談ですが、磁場を測る人がガン患者の家かそうでないかを知っていると(本人が意識していなくても)患者の家では丁寧に測定するなどデータに偏りがでることがあるので測定者にはなにも教えないのです。また、こうして選ばれた患者群と対照群の間の生活状況(年収、学歴、出産年齢、居住地、住居の所有、住居の種類、兄弟姉妹の数など)が違わないように再度検討した上で分析されています。
その結果、結論として「小児白血病はこれまでの基準に従って分類すると磁場レベルと関係しなかった」と発表されたのです。完成度の高い疫学調査です。電波(電磁波)は心配しなくてもよさそうです。今までの問題を指摘した論文が違っていたのでしょう。科学の世界ではこういう大転換もたまにはあるものです。
私もこの論文も読んでみました。報道と違って、電波(電磁波)の危険を否定できないデータがちゃんとあるではないですか。
調査した多くの人達が生活している0.2μT(マイクロテスラ:磁束密度)以下の曝露では患者群が対照群より多くなるということはなかったのですが、0.2μT以上の曝露で1.31倍に、0.3μT以上で1.46倍に、0.4μT以上で6.41倍にと、白血病は、磁場が強くなるほど増えてきています。ところが一番強い0.5μT以上で1.01倍と逆に減っているのです。アメリカの国立ガン研究所の研究者は、結果を検討して「0.2μT以上のリスクの高いレベルの子どもは少なく(患者58人、対照44人)また、曝露と白血病の関係が最後の0.5μT以上で1.01倍と落ちこんでいるので、一貫したパターンになっていない。また、0.4μT以外は95%信頼区間が1以下からになっている」と白血病の関係を否定する結論をだしています。けれども、前述したように、調査は実験とはちがいます。一定の条件をつくって調査することはできません。0.5μT以上に住んでいた人は、患者5人、対照者5人と、たの磁場より調べた数がぐっと減っています。結果が一貫したパターンにならないこともあるでしょう。でも、もう一度データの数字を見て下さい。他の磁場レベルでは、レベルが強くなるほど、明らかに患者群が対照群より多くなっているのです(両反応関係がある)。しかし、調査の結果から研究者が導き出す結論というのは、その研究者の立場や考え方によって違ってくることがあります。ですから、結果については多くの人が議論しないといけません。高い磁場に住む子どもに白血病が多くでているのを「数が少ない、パターンが一貫していない」といって無視してしまうことには無理があると思います。なぜなら、今までの研究結果とも同じ傾向が出ているからです。私たちは似た研究から法則性を見つけようとしているのです。まさに、この研究も磁場と小児ガンとの関係を示唆していると考える方が良いと私は思います。なぜなら、こうした問題はいつも集団のなかのほんの一部の弱い人の側にまず異常が出るからです。やはり疑わしきは避けるということでしょう。でも、家の問題ですからそう簡単に解決しない問題があります。ここに電波(電磁波)問題が最後の公害といわれるゆえんがあるのです。詳細はニューズレター19号に掲載されています。
同じ量の電力を送ろうとする場合高電圧で送れば送るほど電流は少なくてすむ。
ということは、送電線での消費電力が少なくてすむ。
| 呼称 |
周波数 |
波長 |
主な発生源 |
| 超低周波 |
0.03ー3Hz |
1000万km−10万km |
地球の地磁気変動 |
| |
3-3千Hz |
10万km−100km |
家庭用電気など |
| 超長波 |
3千Hz-3万Hz |
100km−10km |
オメガ |
| 長波 |
3万Hz-30万Hz |
10km−1km |
船舶、航空機航行用ビーコンなど |
| 中波 |
30万Hz-3メガHz |
1000m−100m |
ラジオ、船舶や航空機の通信など |
| 短波 |
3メガHz-30メガHz |
100m−10m |
短波放送、無線、アマチュワ無線など |
| 超短波 |
30メガHz-300メガHz |
10m−1m |
テレビ、FM放送、ポケットベルなど |
| 極超短波 |
300メガHz-3ギガHz |
1m−10cm |
テレビ、タクシー無線、電子レンジなど |
| センチ波 |
3-30ギガHz |
10cm−1cm |
衛星通信、気象用レーダーなど |
| ミリ波 |
30ギガHz-300ギガHz |
1cm−1mm |
各種レーダー、各種衛星通信など |
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