「学校給食衛生管理の基準」て何なの

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私たちが給食を食べだしたときはもう学校給食法(1954年)があって、教育の中に組み込まれていたのですが教育的なことはなにも感じた記憶がありません。食べ物の量が足りなかったのですから好き嫌いなんていってられなかったこともあります。しかし、そうした時代でもどうしてもこれは食べられないという子がいました。これは個人の嗜好の問題ですかどうしょうもないことです。 ところが、今、小学校に入学する子を持つお母さんが心配するのは「勉強についていけるだろうか。いじめられないだろうか。そして、給食が全部食べられるだろうか」だそうです。好き嫌いがたくさんある子を持ったお母さんは特訓までしているという話を聞いて本末転倒なことが起きていると思います。食べるということがまるで難業苦業の始まりのようになってしまっています。これは好き嫌いはよくないと言う呪文が社会全体にかけられているから心配になるのもわかります。その呪文が効かない子が多くなって食べたくないものは食べないとはっきり主張します。教員は好き嫌いはだめだと呪文を何回も何回も唱えなおすことになります。この例のような呪文が多くあることが学校給食の問題の一端でもあります。今回はO157問題をきっかけに文部省が作り直した「学校給食衛生管理の基準」という呪文集について考えてみたいと思います。

 今年4月1日付けで全国に「学校給食衛生管理の基準」が通知されました。この通知は今から38年も前に出された(1959年)「学校における伝染病・食中毒の予防について」までさかのぼって、それ以降21回だされた通知を1本にまとめたものです。この通知を読んでみると古い呪文が書き直されているだけという部分もたくさん残っています。それから、安上がりにということで、大量に食材をあつかう統一献立や共同購入を適正な規模にするようにと指示もしています。しかし、具体的に適正な規模が示されていないのでほとんど役に立つとは考えられません。この新しい通知で学校給食が運営されるのですから重要な通知なのは間違いありません。そこで5月の終わりに、文部省と厚生省の担当官を呼んでこの基準について説明会がもたれました。
 この通知の大きな柱はO157のような食中毒を未然に防ぐことです。今回の事件から、現在の学校給食には似たような中毒がまた起きる可能性があります。どのようにしてそれを予防するのか、根本的な解決方法は見つかったのかということです。
 しかし、この通知を読んでいくといろいろな問題も出てきます。わかりやすい例をいくつかあげていきましょう。

 調理の過程について、具体的な指示がでています。加熱する食品は中心温度が75度で1分以上にしなさいというのですが、焼物の中心温度を75度1分以上に保とうとすると外側がコゲてしまい食品としては適さないという現場からの指摘がされました。料理を作ったことのない人が菌ことだけ考えて作った基準だというのです。最初は70度1分といっていたのが途中で変ったこともあるのですが、肉についているO157は62.8度で24秒あれば死んでしまうことがわかっています。アメリカではミートローフのような肉加工品について、中心温度が68.3度になれば8秒でO157は死んでしまうので、安全を見積もって15秒間はその温度を保つようにという基準を作っています。菌の心配はないが食べるのにも適さないでは困ります。もっと現実にあった基準にしないと子どたちが食べないとか、調理の方法が変ってしまうなどして基準の意味がなくなってしまいます。 「生で食用する野菜類、果実類については、流水で十分洗浄し、必要に応じて消毒するとともに、必ずその日のうちに給食すること。また、中性洗剤や消毒材を使用する場合は、それらが完全に洗い落とされるまで十分に流水で水洗いすること」としています。必要に応じて消毒しなければならない野菜や果物が学校給食の食材として納入されることの方が問題だと思うのは私ばかりではないと思います。業者に取り替えさせればいいのでしょうが、ここにもう一つ問題があります。この消毒を必要と誰が判断するかです。現場の栄養士がやらされていることが多いのです。これは誰が見てもおかしいと思う食材ならいいのですが、目に見えない菌を相手ですから五感でチェックは無理です。業者にだって納得できるような説明ができるものでなければ返品は難しいし、自分で安全だと自身が持てるようなデータはないし、こうなると万が一のことも考えて消毒をしとこうということになってしまう心配があります。実はこんな断定的な結論を出せるような調理施設は世界中にないといということです。そんなことをしなくても中毒を防げるような食文化を世界の国々の人は作ってきたのです。それでも事故は起きることがあります。しかし、学校給食で一括購入やセンター方式のように少しでも安くなればと無理をした人為的なシステムで起きた中毒をその問題のシステムに手を付けないで、消毒で防ぎましょうというのが間違いなのです。ついでに、今どき中性洗剤で野菜や果物を洗っている人がいますか。昔、下肥に人糞を使うと寄生虫の卵がついていることがあるので洗剤を使うと良いといわれて使った時代もあります。しかし、逆に合成洗剤が野菜に残留することや必要性がないことから使われなくなりました。これが、もし学校給食現場でやられているとしたら、それ以前の問題です。
 私たちはO157で学校給食現場で起きている過剰防衛をどうしたら止めることができるのか考えているときに文部省にこんな通知を出されたら困るのです。資料1として、これまでにO157が原因として発見された食中毒、またはO157が発見され厚生省が確認している一覧表を付けておきます。

 もう一つ、この通知に、調理した給食は調理後2時間いないで給食できるようにしなさいという指示があるのですが、具体的には配送車を増やということになっています。これは実態調査でセンター給食で調理後2時間以上も前のものが子どもたちに届けられている実態が多くあったのです。調理後何時間もたったものを食べるという矛盾がセンター方式の給食にはあるわけです。ご飯やパンは2時間前なんていうどころか職員が出勤したときには届いているといのが実態です。配送車を増やせば運転する人も多くなります。結果はそう安くもならず子どもたちには時間がたった給食を食べさせることになります。ですからお母さんたちがセンター給食を反対するのも当たり前といえます。これが自校方式なら12時10分まで火を入れておいて暖かいものを出せます。これが当たり前の学校給食なのです。

 思いきった指示もあります。食材の選定には「有害な食品添加物はもとより、不必要な食品添加物(着色料、保存料(防腐剤)、漂白剤、発色剤)が添加された食品、内容表示・製造年月日・製造業者等が明らかでない食品、材料の内容が明らかでない半製品等は、使用しない」というものです。読めば当たり前のことが書いてあるのですが、問題は厚生省が「有害な添加物は許可していない。製造年月日は必要ないからこの4月から賞味期限だけにしてある。それを文部省が通知でひっくり返すようなことをされたら困る」と抗議されたとき、「これは文部省としての子どもを守るための見解で厚生省からとやかく言われる筋合のものではない」と突っぱねることができるかなのです。文部省の課長や担当官はこの点を指摘されるや通知内容の再変更もありえるという逃げ腰になってしまったのです。私は厚生省が安全だと言っていても文部省の見解としてそれなりの良識を持っているのは当たり前だと考えるのですがそうはいかないのです。
 文部省は給食現場での食中毒を防止しようと過剰な防衛方法を正式な通知として出しました。このシワ寄せが最終的に子どもに行くことになります。
 予定の枚数が足りなくなってきました。学校給食はあるだけでありがたいというお母さんから、給食はいらないといお母さんまでいろいろな意見があります。私はいろいろ問題を抱える学校給食ですが、学校給食は大きな可能性を持っていると考えています。次の世代に食の文化、食の安全という意味、生産から消費そして廃棄まで、そのつど起きる問題を通して体系的に伝える場としての学校給食の可能性は大きいと思うのです。号を改めて学校給食にどのくらいの可能性が残っているか皆さんといっしょに考えていくことにしましょう。

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