米国ミネソタ州ブルックリンパークで1998年6月16日から24日にかけて開催された専門家による会議において、電磁波と小児白血病との因果関係を認める報告書がまとめられました。この会議は国立環境衛生科学研究所(NIEHS)と米国エネルギー省が1992年より共同ですすめてきた5ヶ年計画のプログラム(EMF
Research and Public Information Dissemination (EMFRAPID ) Program)の中の委員会によるものであり、31名の専門家たちによって構成されています。電力の生産、送電、使用において発生する超低周波電磁界(50〜60
ヘルツ)の生体への影響について検討が行われており、今回の報告書をもとに、今年中には最終報告書が米国議会に提出される予定です。
この会議では、疫学調査に基づいた電磁界の生体への影響にかかわる各種調査の報告などを綿密に検討した結果、「送電線の周辺に起きる電磁界は、人のガンと関係があると考えるべきである」との結論が作業部会31人中19人の委員によって支持されました。この報告は、ガンとの関係について否定的だった96年10月の全米科学アカデミーの結論を覆す内容です。
発癌の強さは、国際がん研究機関のランクにすると、ランク2の「可能性あり」(この中にはA:
恐らく(probably)とB:たぶん(possibly)の2段階がある)のBに相当すると評価されています。
この結論はスウェーデン、カナダ、フランス、アメリカの疫学調査の再評価と、ガンの種類としては白血病、脳腫瘍、乳ガンなどが検討されています。こうしたこれまでの研究の問題点を徹底的に検討しています。しかし、それでも送電線によって作られる電磁界の人への発癌性を否定できなかったというが重要な意味を持っています。
また、ガン以外の、アルツハイマー病や筋萎縮側索硬化症、鬱病、循環器病など、生体へのその他の影響調査についても検討されていますが、どの調査報告も人体への影響について「証拠が不十分である」と評価しています。実験動物での結果についても「証拠が弱い」とする評価になっています。しかし、こうしたなかで、唯一、「明確である」との評価が多数(19名中14名。5名は適当な証拠(moderate
evidence)と評価)を占めたものがありました。電磁界への暴露による骨の修復と適応性です。骨の修復の初期段階において、臨床での電磁界への暴露が著しい効果をあげるという研究結果です。
今回の報告書は98年8月10日から10月9日までの期間、インターネットやCD-ROM、文書(ともに送料無料)などによって一般に公開されており、米国国立環境衛生科学研究所ではこの期間内に書面による一般からの質問や意見を受け付けています。また口頭で意見を述べられる公開質問の場も米国内3ヶ所で設けられています。こうした一般からの意見も踏まえ、最終報告書が作成され、98年内に米国議会へ提出される予定です。
1979年3月、ワルトハイマーとリイーパーは「電力配線の形態と小児ガン」という論文をアメリカの疫学雑誌に発表した。内容は1976年から77年にコロラド州デンバー市周辺の高圧電流の流れている電力線の近くに住む子どもと、離れた地区に住む子どもを比較したところ、電力線の近くに住んでいる子どもにガンが多く電磁波の被曝量と関係があったというものであった。発電所から23万ボルトで送電された電気は変電所で7千6百ボルトに下げられ、さらに電柱上のトランスで240ボルトに下げられてから家庭に送られる。そこで、大電流カテゴリーは変電所から150m以内、1万3千ボルトの電線から40m以内、240ボルト場合は最初の電柱から2番目の電柱までとして、その電線から15m以内とに分けている。これよりも弱い磁場範囲を小電流カテゴリーと名付けた。この4つに分けたコードが「ワルトハイマー分類コード」と呼ばれています。そして、この大電流カテゴリーでは小児のガンが2倍に、小児白血病は3倍にもなっていると内容でした。その後、この論文には各患者の家で電磁波を測定していないなど反論が寄せられ大きな論争になった。
この疫学調査がきっかけとなりいろいろな疫学調査が行なわれだした。
1980年、フルトン(米)はロードアイランド地方の配電線調査で小児白血病は1.09倍で有意とはいえないと報告した。
1992年、ウィルソン博士(英)は哺乳動物が微弱な電磁場に曝されるとメラトニン(免疫と乳ガンを抑える機能をもつホルモン)の分泌障害が発生すると報告。
1992年、スウェーデンの国立労働者健康研究所のブルデリュース博士が電磁波被曝労働者とガンとの疫学調査結果を発表した。白血病は2.9mG以上で3.04倍、2〜2.8mGで2.21倍、1.6〜1.9mGで1.10倍であり、被曝量と白血病の間に比例関係が見られると報告した。
1992年、スウェーデンのカロリンスカ研究所のアルボム博士らが、政府機関や電力会社の協力を得て行った疫学調査を発表。1960年から85年までの病気登録をもとに、スウェーデンの送電線がある所から325メートル以内に自分の住む土地があり、そこに1年以上住んだことのある子どもを対象に調査が行なわれた。そこで電磁波の調査も行ない、過去のデータは推定値で被曝量が求められた。その結果は3ミリガウス以上の被曝で小児白血病が3.8倍、2ミリガウス以上で2.7倍になるというものであった。
1997年7月3日号の「ニューイン グランド ジャーナル オブ メディスン」という雑誌に、アメリカの国立ガン研究所から「居住地での磁場の曝露と小児の急性リンパ芽球性白血病」という調査結果が発表された。この研究は電線からでている電磁波で子どもの脳腫瘍や白血病が増えるという今までの調査研究とまったく反対で、白血病は増えていないという結果になっている。
しかし、これまでの研究では子どもが磁場にさらされると白血病になりやすくなるという報告が多かったが、今回の調査結果では60Hz(ヘルツ)の電力線が通っている子どもの家で電磁波を測って、電磁波の強い所に住む子どもに白血病が多いということはなかったというものである。ところが、この論文を読むとやっぱり問題がある。「0.2μT以上でも、子どもたちに白血病の有意な増加を示さなかった」としながら。「曝露が0.3μT以上では白血病のリスクが増加を示している」と報告していた。また、磁場レベルが極めて高い住居の子ども達に白血病の危険が増加する可能性を排除することはできなかったと述べていた。今回こうしたデータが再評価された。
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